3月9日に、旅を終えて帰って来た話(あとがきのようなもの)

帰りの車内で、今回の旅日記を書き始めた。

そう、ここでようやく、その①の時系列に戻ることができるのである。

 

隣で相棒は、ぐっすり眠っていた。
窓の外は暗く、消灯されない車内から、夜の四国の様子を確認することはできなかった。


気がつけば僕も、眠っていた。
吉野川SA直前で、目が覚めた。

 

眠る同行人を横目に、SAで用を足し、再度お土産を眺める。ひめだるまはなかった。

 

代わりにはならないけれど、相棒のために、みきゃん(愛媛のゆるキャラ、みかんの犬)のポーチを買った。
彼は、常備薬の胃薬やなんやを、小さなポーチに入れて使っているのだが、それがずいぶんくたびれていることに、この旅行中気づいていたから。

 

 


ひょっとすると、これを読んでいるあなたは、僕たちを気持ち悪いと思うかもしれないね。
ただ、友情とは得てしてこういうものだし、加えて申し上げるならば、ここに書かれていることが全て真実である保証などないということを、どうか知って欲しい。

 


バスに戻っても、相棒はまだ眠っていた。
僕も再び、眠りについた。気が付いた時には、1時間近くが経過していて、四国を抜け、淡路島に辿り着いていた。

 

僕たちの街も、僕たちの日常も、もうすぐそこだった。


明石海峡大橋に差し掛かった時、ずっと眠っていた相棒が目を覚ました。

 

イヤホンを外して、「いい曲だからずっとリピートしていた」、なんて言っている。寝ていたくせに。

ほな聞かせてというと、自分のイヤホンを使えという。耳カスがつくのが嫌らしい。同じ風呂に入っておいて、いまさら何をいうやら。


相棒は、相対性理論の『ヤミヤミ』を聞いていた。可愛い曲だけど、奴のキャラに合わないやつだし、何より眠りにつく歌じゃなかろう!

旅の終わりに聞く声が、やくしまるえつこだとは思わなかった。

 

お返しに、フジファブリック『夜汽車』を聞かせた。
旅の終わりに聞く声を、志村正彦にしてやった。相棒は、照れ臭そうにはにかんでいた。

 

大学四回生同士とは思えない時間だった。これは、女の子同士がやらないと映えないやつだなぁと、旅の最後に笑った。


そうしてキャッキャしてるうちに、バスは三宮についてしまった。日常が僕たちを迎えてくれた。


僕たちと入れ違いに、三田行きのバスと、淡路島行きのバスに、たくさんの人が乗り込んで行った。たぶんきっと彼らは、これから日常に帰るのである。
日常と日常が交差する場所に、僕たちはいた。


JRに乗って帰る同行人を、阪急の僕は見送るのが筋だ。

筋なのだが、なんだかどうしても寂しくて、結局僕も、JRで帰ることにした。20分電車を待った。思い出を整理して、寂しく笑った。

 

忘れないうちに、みきゃんのポーチを渡した。
気色悪いねんと言いながら、相棒はそれを受け取った。


電車が来た。
相棒が新快速に乗って、姫路方面へ去っていくのを見送った。


旅は本当に終わった。非日常が終わった。
三宮の夜が、煌々と輝く夜が、日常をきらめかせていた。

 

たった一泊二日の非日常が、僕の日常を彩った。旅はいい。本当にいい。


願わくば少しでも、僕の楽しかった経験や気持ちが、あなたに伝わりますように。
3月11日の夜、いろいろなことを考えながら、ようやく僕は、親指を置くのであった。