3月8日と9日に、道後温泉に行った話①

 

僕は学生旅行と無縁だ。
2回生の5月に落研を辞めて以来、家族旅行、あるいは個人旅行以外で旅行をしたことなど、ほとんどない。

 

長期休暇が訪れる度に、全国300万の大学生諸君たちは、やれ部活の同期だの、やれゼミの仲間だのと、慌ただしく旅行へ出かけて行く。

「行きたないわー、金ないわー」
と言いながらも、奴らは旅先を満喫するのである。

 

鳥取砂丘では、お調子者キャラの短髪2回生が、砂まみれになって笑いを取る。なにが面白いのだろう。
ラクダになりきりふたこぶになって、先輩を乗せるとか、せめてそこまで行ってくれれば良いが、それを良しとする団体の空気と、自分はなにもしてないのにご満悦な先輩は嫌いだ。

 

琵琶湖ではとりあえず、先輩に水を飲まされる。マズっ!と一声叫んで、ワッと座が湧くが、なぜか飲ませた方よりも、飲んだ方がドン引きされるのが世の中。最悪だ。


最悪だけど、最高だ。
面白くもなんともないし、正直、そんなグループに混ざって旅行したって、絶対楽しくない(むしろ、イライラして帰ることになる)と思うんだけど、

それでも、毎春、毎夏、毎冬と、いつもひとりで落語を見たり、なにがしかを考えたりしていた僕よりは、ずっと学生らしい学生生活を送っているのだと思う。

 

学生落語会を主催していた頃は、それでもよかった。
主催寄席こそが、各休み期間のメインイベントであって、全ての予定が、その日程に向けて組まれていたから。
3回生の3月に、その主催寄席も終わった。

 

以降、「卒業旅行」という言葉を聞く度に、僕は一人孤独感に苛まれることになり、ついには両親や兄妹から
「卒業旅行とか行かないの?」
と聞かれて、あまりの惨めさに
「行くかもしれんけど、みんなそれぞれ予定あるからなぁ」
などと、お茶を濁すようになった。

みんなというのは、「友達みんな」という意味である。わかるだろうが、僕にそんな仲間はいない。


そんなわけだから、僕はこのまま卒業式まで、一人寂しくアルバイトに励む予定だった。

まさかこうして、道後温泉へ卒業旅行に来るなどとは、夢にも思わなかったのである。


きっかけや経緯については、その人に迷惑がかかってしまうから、ここでは言えない。
簡単に、本当に簡単に言えば、誘われたのである。行こー、って。

嬉しかった。たぶん、学生生活で一番くらい嬉しかった。
と思ったけど、さすがにこれは盛りすぎ、というかもはや嘘だ。

順位はわからないけれど、とにかく僕は嬉しかったということだけ、稀有なあなたにご理解願いたい。


道後温泉の思い出を、ひとつひとつ連ねることには、そんなに意味がない。名所紹介が見たいなら、このブログじゃなくて、るるぶなりじゃらんなり見た方が良い。

 

 

 

ここまで記事を書いてから、僕はすっかり眠ってしまっていた。
いま、吉野川SAを通過したところ、帰り道のバスに揺られているのである。四国は広い。

 


寝ている間に気が変わったので、僕は僕の・・・いや、僕たちの卒業旅行についての思い出を、書くことにする。

僕たちの卒業旅行!!!
いい響きだなあ!!!!

 

初日、8時20分に神戸三宮を出た。
僕も同行人も、神姫バスに乗るのは初めてだったので、JR三宮東改札で待ち合わせをすることにした。
けれど、予定というのは大体、その通りにいかないのが旅行だ。

 

僕は張り切って、朝ごはんを食べてしまったのである。
中学生の頃に気がついたのだが、僕はあんまり、胃腸が強くない。特に、朝早くにしっかりご飯を食べようものなら、しばらくしてから相当な腹痛に悩まされることになる。

 

高校進学によって起床時間が変わり(30分ゆっくりになった)、すっかりなりを潜めていたこの腹痛に、僕はいきなり悩まされることとなった。

 

一足先に、神姫バスターミナルに乗り込んで、用をすませる。便座に座りいきみながらLINEを打って、待ち合わせ場所を、改札からバスターミナルに変更してもらった。

これがいけなかった。


同行人は、神戸の街に不案内であった。彼は誤って、JRバスターミナルを目指してしまったのである。
用を済ませ、慌てて再度、東改札に向かう。

 

なんとか合流できた時には、8時10分を少し回っていた。バスは、8時15分の発車である。
まさか、この旅1番の猛ダッシュを、初っ端のハナに記録することになるとは、思わなかった。

 

8時14分に、乗車完了。やれやれ。
でも、バスは5分遅れて出発した。

平日ということもあり、車内は空席が目立つ。
空いてる席を使ってもいいということだったので、リュックや上着を置かせてもらった。いい運転手だった。

 


快晴ではなかったけれど、時折晴れ間も見える曇り空で、バスに乗っていても気持ちが良い。
明石海峡大橋を渡ったのは、小学4年の宿泊訓練以来だ。

 


淡路島の景色は美しかった。神が最初に作った島。
もののけ姫を見て以来、そんな風景のすべてが、ジブリの世界に見えてくる。

淡路島を通り抜け、しまなみ海道をいく。鳴門の渦潮が、美しくぐるぐっていた。またジブリだ。


四国に足を踏み入れたのは、初めてだった。
淡路島とは、また一味違った景色。三月だと言うのに、徳島の山々には雪が積もっていた。またまたジブリだよ。こんなんの連続。

 

そこへ住む人からしたら、洒落にならないことなのだろうけど、そこに済まない僕からすれば、三月の残雪は見目美しいの一言で、旅が連れて来てくれる非日常に、早くも心躍っていた。

 

本当は、淡路島くらいからずっと躍っていたのだ。心は。
その踊りが、『Sugar!!』から、『リンダリンダ』に変わったような形。おわかりにならない?僕も。

 


僕たちは、道後温泉本館に行く以外、何も予定を決めていなかった。
隣で熟睡する同行人を横目に、母親に借りたガイドブックを眺める。彼女はいま、八十八ケ所巡りの最中なので、四国に詳しいのである。

 

美味しいお店とか、いくべき名所とか、駅から宿への行き方とか、坊っちゃん電車の時刻表とか、
そんな諸々を、ある程度調べておく。
やっぱり僕には、無構成が向かないらしい。
旅のプロットをたて終わり、30分ほど寝た頃には、行きの吉野川SAだった。用を足して、車内に戻り、また眠る。

眠りはもっとも簡単なワープの方法だな、と思う。

 

 

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ここまで書いた時、iPhoneの充電が1%になってしまった。

仕方がない。iPhoneを充電器に挿して、目を閉じる。続きはまた書くことにすれば良いのだ。

終わった旅の記録をつけるのに、遅いも早いもない。

 

ただそれによって、件の大作の完成は、さらに遅れることになる。ご容赦と、ご期待を乞い願いたい。