3月1日に、嘘をついた話

 

僕は実家暮らしだ。
仕事が決まれば、家を出ないといけないのだけれど、就職活動なんてものは、そう簡単にうまくいかないものである。
焦りは禁物だ。社会の目なんて気にしないのである。


実家暮らしの利点を、ここで改めて語る気は、さらさらない。みんな知ってるでしょう?

とはいえやはり、「家に帰ればご飯がある」って、相当幸せなことなんじゃなかろうか。
いや、相当幸せなことだ。
疑う余地などあるまい。

 

けれど、いまは状況が状況なのだ、
母よ、俺はいま、断食をしているのだ。

 

二日目のカレーは、相当美味しそうだった。お袋の作るカレーは、この世のカレーの中で一番うまいのだ。俺にとって。贔屓目に見て。


今夜はおそらく、三日目のカレーだ。
ひょっとすると、カレーうどんにマイナーチェンジが行われているかもしれない。
いや、間違いなく行われている。疑う余地などない。母はそういう女だ。

 

「三日もカレー続くと飽きるやろから、ちょっとくらい手間でも、少しは変えてあげな。」

 

とか、平気で言っちゃう女なのだ。
愛情が痛い。

 

母よ許せ。
俺は二日目のカレーを食さなかった。
三日目のカレーうどんも、口にはしない。

「研修で仲良くなった子と、飯食って帰るわ」

なんて、嘘八百なのだ。
そもそも、飯に行こうと言えるほど、研修仲間と仲良くなんてなっていない。
許せお袋、俺は悪い息子だ。

 

 


このように、母についた嘘が、僕の中でドンドンと重たいものになってきている。


断食明けは、お袋の手料理にしよう。

 

 

と思ったところへ、

「明日は宝塚歌劇を観に行くので、晩御飯は適当に済ましてください」

というLINE。