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2月27日に、僕はこうなりたくないし、なれないなぁと思った話

 

派遣会社は、とあるオフィスビルにある。オフィスビルというぐらいだから、中にはオフィスがあるのだ。


オフィスがあるということは、そこで働く人たちもたくさんいる。その名を会社員とか、社会人とかいう。


大量の会社員に混ざって、巨大なエレベーターに乗った。漫画とかで、地下闘技場に降りていくタイプのサイズだ。
そういえば、何人乗りか知らない。おそらく、30人は乗れると思う。


スーツだらけの空間。隣のおじさんが、私服の僕を見る。

いや、違った。イヤホンが音漏れしているのだ。こりゃ失敬と思って、すぐ音を切り、イヤホンを外して、初めて気づいた。


30人もいるのに、何の音もしない。誰も口をきかない。沈鬱な表情で、エレベーターの階数表示を、みんなが見ているだけの世界。
これが社会か、と思った。


エレベーターを降りると、会社員たちはまっすぐ速歩いて、さらに高層階に続くエレベーターへと向かった。レールを成していた。

僕はというと、先に上着を脱ぎたくて、左にそれて、休憩スペースに荷物を降ろしていた。
レールからはずれたのだ。


大きな窓の下に、大きな街が見えた。これが社会だ、と思った。


会社員のレールを振り返る。
僕はこうはなりたくないし、なれないなぁと思った。


けれど、窓の下の社会を支えているのは、この人たちの方だとも思った。

僕は社会や世界について、あることないことを色々と夢想するけれど、そんなよそ見をしない人たちが、実際には社会を回して、支えて、作っている。

何も考えていないミュージシャンは、すぐに社会の犬とか、歯車とか言うけれど、犬にもなれず歯車にもなれないような、はみ出した部品に値打ちがあり得るのだろうか。


でもやっぱり、僕はこうはなりたくないし、なれないなぁと思った。

彼らとは違うエレベーターに乗った。